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知の技法| academic skills(3)

写生文章を描こう

· 知の技法

文章を書くトレーニング

知の技法では、基本的に課題を出し、それをアウトプットしていくことを徹底します。ゴールデンウィークまでの間に、皆さんには知図を描いてもらいましたが、それをみながら、次は文章を書くトレーニングをしたいと思います。

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おそらくスマートフォンで気になるものを全て写真を押さえておこう、というアドバイスもしましたから、写真をみながら歩いた時の記憶を呼び覚ましてください。

ルールを持って書く

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次の8つのルールを設定して、歩いた足跡を見たまま文章で再現しましょう。

  1. 単文の連続で書く (無駄に接続詞で続けない。リズミカルに単文で連ねる)
  2. 眼で見たことをそのまま文章にする(カメラマンと実況中継の二役を同時進行する感じ)
  3. 五感をフル活用して、感じ取ったことをそのまま文章にする (視覚だけでなく、聴覚、触覚、臭覚を研ぎ澄まし、文章にしてみる)
  4. 看板で得た情報や人から聞いた話を盛り込む(現場の一次情報を大事にする)
  5. 難しい用語を避ける(専門家ではなく、一般の人を読者と想定する)
  6. お母さんやお父さんが初めて読んでわかるレベルで書く(分かりやすさが大事)
  7. 時系列で描く(スタートからゴールまで、また、一部区間にフォーカスしてもいい)
  8. ウェブや本からの情報を盛り込んではいけない(まずは他人の意見や情報を入れない)

サンプル文章

ルールを守ると言っても、具体的にどのような文章なのか、想像がつかない人のために、以下にサンプルを貼り付けておくので、参考にしてみてください。

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 JR八王子駅に降りるのは、人生ではじめての経験である。今日一緒に歩く市川力さんは八王子出身。生まれてから20代前半までをこの地で過ごした「最良のナビゲーター」である。しかし、いつものように何も決めない。ただ、なんとなく、興味の向くままに歩く。

 はじめに気になったのは、長光山本立寺という大きな寺だった。ふらっと入る。八王子市教育委員会が作成した「文化財説明板」なるものを発見した。この説明板は八王子市教育委員会が推薦する指定文化財、千人同心関係史跡が解説文とともにマップになっており、大変便利な「知図」である。ここから我々の探究センサーが動き出した。

(市川)「ちょっと待ってください!小学校の頃、市の行事や大会で通っていた富士森公園に浅間神社があるなんて、知りませんでした」

(原尻)「え?武田信玄の娘のお墓が八王子にあるって、なんでですか?」

(市川)「八王子では有名で、松姫もなかという銘菓があるくらいですよ」

(原尻)「えー!大久保長安陣屋跡って、あの徳川家康の金奉行だった大久保が八王子とどんな関係があるんですか?」

(市川)「ずっと八王子にいましたけど、大久保長安の痕跡がこんなにあるなんて知らなかったなぁ」

 この会話で、なんとなくルートが決まった。まず、浅間神社に行こう。武田信玄の松姫様の墓参りをして、大久保長安が住んでいた陣跡を見る。その後は、また気の向くままに歩けばいい。今日は2月なのに歩いていると汗ばむくらいだ。八王子は高尾山などの山間部への入り口だから勝手に寒いと思い込んでいた。それでダウンジャケットを着てきたのだが、暑くて邪魔なくらいである。

 浅間神社のある富士森公園は小高い丘にある。JR八王子駅からは緩やかな登り坂で、これがさらに汗ばむ要因にもなっている。富士森公園は陸上競技場、野球場などが一箇所に集まっており、中学高校の大会が行われる場所のようだ。特に陸上競技場はリニューアル間近で、トラックの土や芝の色が目に飛び込んでくるほどの鮮やかさであった。浅間神社に来て、また驚かされた。この神社はどうも大久保長安が作ったようなのだ。本殿に無造作においてあった「浅間神社縁起」によれば、「慶長年間に惣代官の大久保石見守長安が高さ6m、周囲109m余りの塚を築き、頂上に浅間神社を勧請したのが当浅間神社の起源」とあり、大久保長安の八王子建設関与の深さを物語っている。この塚に登ると、天気のいい日には富士山が見える。もしかしたら、晩年、駿府(静岡)の富士の麓に暮らした徳川家康が、富士山というシンボルと徳川幕府の権威を重ね合わせ、宗教性を持たせたのかもしれない。東京には富士見坂が多い。関東には「富士見」という地名も多く、江戸時代、富士講が流行った。人々は富士山を見るたびに、徳川政権を無意識に連想する。そんな仮説が脳裏に浮かぶ。

 次は松姫様の墓参りだ。御供物のおまんじゅうを買おうと、浅間神社近くの和菓子店「篠崎花月堂」に入った。まんじゅうを買うついでに、先の「浅間神社縁起」に毎年「だんご祭り」を行っているという記載があったので、そのだんごを作っているのか聞いてみた。すると、女将さんが「前までは境内にだんごを作って販売していたけれど、最近はテキ屋さんとの関係で販売できなくなったの。だから、お祭りの期間はお店の前で売っている程度なの」と話してくれた。おそらく暴対法の影響だと思われる。コミュニティの大事なお祭りに、昔から支えてきた街の商売が排除されてしまったことに、もどかしさを感じざるを得なかった。

 松姫様をお祀りする新松院は、境内が整備され、花が咲き誇る美しい寺院だった。参拝する人はほとんどが女性で、境内にはカフェもあり、街の人気スポットになっていることがわかる。大きな本殿の横を通り抜けて、裏手の墓地にいくと、少し小高くなったところに松姫様だけに立派な松とともに墓石がある。お参りに来る方が絶えないのだろう。生き生きとした献花が飾られている。花の香りがフワッと漂ってくる。八王子の人たちに松姫様が大事にされていることがわかる。信松院には武田家の家紋である「割菱」が至るところに見える。戦国時代、武田家は滅亡したはずだが、どうやってこの地に姫が来て、現代までどのように引き継いできたのか、大変気になるところである。

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課題とスケジュール

課題:上記に示した「8つのルール」に従って、知図とスマートフォンの写真を頼りに、歩いた足跡が感じ取れる「写生文章」を1,600字前後で描きなさい。(締め切り:2021年5月23日 am10:00)

提出フォーマット:Wordsのドキュメント、あるいはテキスト文章。

*早めにアップして、僕の指南を受けた方が得点は確実に上がります。歩いた足跡を思い出しながら、なるべく早く仕上げて、manabaの「レポート」にアップしてください。